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モンゴルはフェルトで家を作るんです

 モンゴルの遊牧民が使用している、移動式住居を、ゲルと呼びます。ドーム型のテントに近いような形の住居です。ゲルは、中国語ではパオという名前で知られていますので、こちらの名前でご存知の方も多いかもしれません。

 ゲルは、もともと移動する事が前提ですから、組み立て式で、かつ軽くできています。このゲルのどこにフェルトが使われているのかというと、壁と天井です。ゲルの基本的な作り方は、ドームの中心に柱を2本立てて、天井には放射状にハリを渡して、それが骨組みになっています。そしての骨組みを、すっぽりフェルトで覆うことで壁にしています。モンゴルのフェルトは、羊の毛を使って作られます。そしてドアを取り付ければ完成というわけです。天井部分は開閉できるようになっているので、ゲルの中で煮炊きをするときには、きちんと煙も出せるようになっています。

 フェルトで覆われている家、というとなんだか心もとない気がするかもしれませんが、暑いときにはフェルトをめくって風通しを良くしたり、寒いときにはフェルトを2重にして暖かくしたりと、ゲルの気温は調整できるのが優れものなのです。それでは雨が染み込んでぬれたりしないのか、これも心配になりますよね。これも大丈夫です。長い年月を経たフェルトほど丈夫になり、防水効果が高まるのです。といっても、もちろん「雨漏りしない」というわけではありませんので、今ではフェルトとは別の、防水シートで覆うのが一般的なのだとか。

 雨漏り対策は別として、モンゴルで作られる、このフェルトの歴史はとても古く、今も伝統的な方法で作られています。ただ、以前は「ゲル」と言えば、遊牧民というイメージでしたが、ウランバートルなどではゲル地区と呼ばれる場所があり、定住用の家屋としても一般的に用いられています。時代が変わった現代では、家の作りそのものが変化したのではなく、人間の生活の方法が変化してきたようです。ちなみにゲルで生活する人が増えたのは、モンゴルが社会主義から民主主義へと変化した際に、地方に住んでいた人達が大勢ウランバートルに集まって住み着いたからです。また、異常気象のせいで遊牧民の生活が厳しくなり、首都圏に移住してきた人達も大勢います。ただ、このゲル地区はインフララインが未整備で近年生活環境を向上させるための計画が進行しています。今後モンゴルが経済発展していけば、いつかこのゲル地区は大きく変貌していくのかもしれませんね。